
日本酒は、いまや世界81の国と地域に輸出されています。では、どの国でいちばん飲まれているのでしょうか。そして、なぜ海外で人気が高まっているのでしょうか。
この記事では、日本酒造組合中央会が2026年2月に発表した2025年の輸出実績(財務省貿易統計)をもとに、国・地域別のランキングと、それぞれの市場の特徴を整理します。海外に日本酒や日本の食品を売りたい事業者向けに、データから読み取れる打ち手もまとめます。
結論:2025年の日本酒輸出は459億円、過去最多の81か国へ
- 輸出金額は約459億円(前年比106%)、数量は約3.35万キロリットル(同108%)。米国の追加関税の影響があっても、どちらも前年を上回った
- 輸出先は81の国と地域で過去最多
- 金額の1位は中国、数量の1位は米国
- 1リットルあたりの平均単価は1,368円で、10年前(771円)の約1.8倍。高価格帯の日本酒が輸出を引っ張っている
輸出金額ランキング トップ5(2025年)
- 1位 中国:約133億円(前年比約114%)
- 2位 米国:約110億円(前年比約97%)
- 3位 香港:約48億円
- 4位 韓国:約44億円(前年比約117%、過去最高)
- 5位 台湾:約27億円
上位5か国・地域で、輸出金額全体の約8割を占めます。中国・米国・香港の3か国だけで約64%です。一方で、韓国が香港に迫るなど、顔ぶれは少しずつ変わりつつあります。
国・地域別に見る人気の特徴
中国:金額トップ、裾野が広がる
中国は輸出金額が約133億円と最大で、数量でも約6,660キロリットル(前年比125%)と2位です。1リットルあたりの単価は1,998円と高い水準ですが、前年(2,193円)からはやや下がりました。高級酒だけでなく、多様な日本酒が出回るようになった結果とみられています。
米国:数量トップ、料理と合わせて広がる
米国は数量で約7,720キロリットルと1位です。2025年は追加関税措置の影響もあり、金額・数量ともに前年をわずかに下回りました。単価は1リットルあたり約1,431円と中国や香港より低く、量が多く流通している市場です。2024年には北米で高級レストランでの採用が進んだことも報告されています。
香港:単価が最も高いプレミアム市場
香港は1リットルあたり約2,376円と、主要市場で最も高い単価です。シンガポールやマカオも2,000円を超えており、高級な日本酒を好む富裕層の市場が形成されています。
韓国:過去最高を更新した成長株
韓国は金額約44億円、数量約5,483キロリットル(数量は3位)と、どちらも過去最高を記録しました。2024年にも前年比129%と大きく伸びており、香港に迫る勢いで存在感を高めています。
欧米の新しい市場:カナダとフランスが過去最高
カナダとフランスも、2025年に金額・数量ともに過去最高を記録しました。フランスでは、和食以外の高級レストランでも日本酒の採用が広がっています。日本酒造組合中央会によると、西欧向けの輸出は2024年までの5年間で約2.5倍に伸び、ワイン業界との協力が成果を上げたとされています。
東南アジア:現地での展開が始まっている
東南アジアでは、シャンパーニュ造りで知られるリシャール・ジョフロワ氏が富山県で創業した株式会社白岩の日本酒「IWA」がインドネシアで販売されるなど、海外の造り手の目線で生まれた日本酒が現地に届く例も出てきました。
海外で日本酒が人気になっている3つの理由
1. 日本酒造りが世界の文化遺産に
2024年12月、日本酒や焼酎、泡盛などをつくる「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。こうじ菌を使い、各地の気候風土に合わせて受け継がれてきた技術が、世界に認められたことになります。
2. 訪日客が日本で日本酒に出会う
2025年の訪日外国人は年間4,268万人を上回り、過去最高を記録しました。旅行中に日本酒を飲んだり、酒蔵を訪ねたりした体験が、帰国後の購入につながることが期待されています。
3. 和食の枠を超えて、高級酒として選ばれている
平均単価が10年で約1.8倍になったことは、高価格帯の日本酒が世界で受け入れられていることを示しています。日本酒は「和食に合わせるお酒」から、ワインのように料理と合わせて楽しむ高級酒へと、位置づけを広げています。
海外に売りたい事業者が押さえたいポイント
- 市場ごとに価格帯を変える:香港やシンガポールは高価格帯、米国は日常から高級まで幅広く、中国は多様化が進んでいる
- 伸びている市場を見る:韓国、カナダ、フランスは過去最高を更新した成長市場
- 料理との組み合わせで伝える:和食以外のレストランでの採用が広がっている。ワインのように合う料理を提案する
- 訪日客との接点をつくる:酒蔵見学や試飲で出会った人が、帰国後のファンになる
- 英語の情報を用意する:銘柄の背景、味わい、合う料理を英語で説明できるページや資料をつくる
AIで海外向けの販売を効率化する
- 国ごとの輸出データや現地のレビューをAIで要約し、売り込む国の候補を絞る
- 商品説明や合う料理の提案を、AIで英語や現地の言葉に下書きし、人が確認して仕上げる
- 問い合わせ対応や商談の準備に使う資料を、AIで効率よくつくる
ただし、数字や産地、製法の説明は必ず一次情報で確認しましょう。お酒の表示や広告には国ごとのルールもあるため、最終的な確認は人が行うことが大切です。
まとめ
- 2025年の日本酒輸出は約459億円、輸出先は過去最多の81か国・地域
- 金額は中国、数量は米国が1位。香港・韓国・台湾が続く
- 香港やシンガポールは高価格帯、韓国・カナダ・フランスは過去最高を更新した成長市場
- ユネスコ無形文化遺産への登録と訪日客の増加が追い風
- 市場ごとの価格帯、料理との組み合わせ、英語での情報発信が海外販売のポイント
※数値は2025年の財務省貿易統計をもとにした日本酒造組合中央会の発表などによります。四捨五入のため、合計が一致しない場合があります。



Discussion
No comments yet